今更ながら「ヒックとドラゴン」みたよー

まぁ、感想と言いつつ実際は神話についてグダグダだべってますが。
以下、ネタバレあり。

いやー、宮崎駿アニメの飛行シーンを参考にしたというだけあって、確かに飛行のあの感覚は、駿っぽかったw 気持ちいい感じもふくめて。
ストーリー自体はシンプル極まりないんだけど、(要はアメリカ人とロシア人が争っていたら、宇宙人が攻めてきて共闘する、あのパターン)、描き方が面白く作られてるし、キャラがみんな可愛いというか、お父さんとお父さんの相談役な師匠が良い感じでw

で、まぁこれ、見たおたくな人は「お?」と思ったと思うんですけど、なんか、トゥースが雷神トールの化身っぽい描かれ方(決戦シーンが明らかに雷をイメージさせようとしてますよね、あれ)をしているのと同時に、ヒックは鍛冶神っぽい描かれ方もしてるなぁ、と。
まんま鍛冶仕事が得意で、知恵者で、最終的に片足を失う。
なんなんだろう? ググって調べてみたら、北欧神話で鍛冶を象徴するキャラはヴェルンドと言うらしいですね。鍛冶神の例に漏れずばっちり片足。まぁ、ヴェルンドは正確には神ではなく人ですが。
wikipedia先生に載っている情報からすると、なんかヴェルンドさん、どっかで聞いたような色んな逸話の派生ネタをかき集めた感じのキャラという。まぁ、こっちがむしろ元ネタなのかもしれませんが。
ただそれらを読む感じ、あんまりヒックとの共通点ないんですよね。鍛冶神という点以外辛うじて、翼を作って飛ぶというのが共通かなってくらいで。

とそこまで考えて、そーいや鍛冶やら戦い方やら教えてくれる、師匠も片足だったことに気づいたのでした。
うむむむむ。
片足の鍛冶神が複数出てくる神話って、どーなん? これ北欧神話のどれどれの神様にだれそれをなぞらえるとか、そういうレベルではないんじゃないか?
つまり、ヴェルンドみたいな、具体的にこれこれという神話の中のこれこれという鍛冶神、みたいなのを参考にしているんじゃなくて、オリジナルの鍛冶神的な存在としてヒックは描かれているのかなぁと。

で、色々見てたら、どうも北欧神話自体、かなり鍛冶のウェイトがでかい神話みたいなんだということが、書いてあったんですね。
鍛冶神のもう一つの特徴である「隻眼」属性を、主神オーディンが持っていたり、とりあえず困ったことがあったら、鍛冶師たよっとけ、な展開多かったり。
更にググってみたらば、鍛冶神が片足なのは蛇神(造物主or地母神)の系譜に連なるからなんじゃないかという考察があって、目から鱗。片足ではなく一本足を尾として引きずっているという解釈。
言われてみれば、鍛冶仕事で片目が潰れるのはなんとなく分かるけど、片足が欠損するのはおかしいよなぁ。タタラ踏んでても足はなくならないだろ、普通。
で、しかも蛇神っつったら、世界各地のドラゴンの元ネタと思しき存在なわけで。
 うお、ドラゴン達と繋がった。

さらにさらに、上記のサイトによると、鍛冶神を生み出す存在というのは、概ね地母神みたいです。もしくは地母神自身が蛇神であり、本質的に造物神である鍛冶神と地母神は同一の存在なんだそうです。
で、ヒックには母親がいないという設定なんですよね。地母神的な者がいないなぁと思ったんですが、代わりに同じ鍛冶神の属性を持つ師匠がいるじゃないですか。
そういや師匠、父親の女房役してたわけだしな。ある意味母なる存在の代替役みたいなものなのかな、と。
実際に母なる存在を出してしまうと、現代的な解釈ではヒックと父親の関係がうまく描けなくなりますしね。基本父子の関係って母親がいるとその影に霞んでしまいがちだから。
だから代替として、もう一人の鍛冶神を登場させたのかなぁと。

まぁでもこの話におけるドラゴンは、実質狼だよね。
家畜を襲い、群れで行動する高い社会性と知能を持つ、恐ろしい生き物。
しかしその社会性の高さと知能ゆえ、仲良くなれれば 、人類の良き友でありパートナーとして、ペット化(犬の始まり)していく。
もっとも、狼も蛇と同じ豊穣神の側面があったりするし、ホロいい女だよホロ

とにかく、話としては現代的な異民族との友愛を描いた、スカッとする気持ちいい物語なんだけど、色々と神話にこじつけたりできなくないよ、ということで。
宮崎アニメだと、ポニョがかなり神話的なモチーフ満載話だったことを考えると、なんかそういうところも駿チックだなぁと。
ただ、ポニョと違って、神話成分はかなり薄めで、現代的な解釈で納得できる描写がメインになっていますけどね。

実際最後の片足の喪失も、現代的に解釈するなら、トゥースと本当の意味で対等な存在になったという解釈になりますよね。
おそろいの弱みを持ち、それゆえお互いに支え合う。
さらによく考えれば、障害者という異端者になることで、ドラゴンという人間にとっては異端の存在と、同等になった。
トゥースの方も、元もと初めの方で不虞となっていたことで、ドラゴンの巣に帰れないドラゴンの中の異端者となったが、そのおかげで人間と共生する最初のドラゴンになれたわけで。
もともと神話的なモチーフでも、不虞者は境界線を越える存在と言えますし……って、あれ結局神話的解釈に戻ったぞ。

いやまぁでも、とにかく良くできた構成の、しかも面白い話だったと思います。

おまけ
自分が読んでてなるほどなぁ、と思った感想がこちら
http://navy.ap.teacup.com/kumiko-meru/1145.html
ここで、初期のヒックはあくまで科学者だ(ドラゴンに対して最初から情が沸いていたわけではなく、最初は興味深い観測対象と見なしていた)という指摘があって、これまたものの見事に鍛冶屋さんだな、と。
原始人類に自然に立ち向かう手段として知恵をもたらす存在である鍛冶神は、要するに原始の科学者と言えるわけで。
つくづくしっかりした神話だなぁ。

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